こんにちは、15韓国語の編集長でネイティブのナ先生です。今回は韓国社会で問題となっている「いじめ」と「校内暴力」について、基本的な韓国語表現から「校内暴力5号」の詳細まで、わかりやすくご紹介します。
韓国のいじめ・校内暴力とは
いじめや校内暴力は世界共通の社会問題ですが、韓国では特有の形態や対応制度があります。韓国では校内で起こる暴力行為を段階的に区分し、それに応じた対応を法的に定めています。まずは基本的な韓国語表現から学んでみましょう。
いじめ・校内暴力に関する基本韓国語表現
韓国語で「いじめ」や「校内暴力」を表す言葉にはいくつかあります。日常会話でよく使われる表現をご紹介します。
韓国語 | カタカナ | 意味 |
---|---|---|
학교폭력 | ハッキョポクリョク | 校内暴力 |
따돌림 | タドルリム | いじめ、仲間外れ |
왕따 | ワンッタ | いじめ、集団からの疎外 |
괴롭힘 | クェロピム | いじめ、嫌がらせ |
사이버폭력 | サイボポクリョク | サイバーいじめ |
これらの表現は、韓国のニュースやドラマでもよく耳にする言葉です。特に왕따は「王様のように一人だけ離れている」という意味から来た略語で、集団から疎外された状態を表す言葉として広く使われています。
いじめに関する会話表現
実際の会話でどのように使われるのか、いくつか例文を見てみましょう:
- 학교폭력이 심각한 문제예요.
(校内暴力は深刻な問題です。) - 왕따를 당하면 선생님께 말해야 해요.
(いじめられたら先生に話さなければなりません。) - 사이버폭력도 법적 처벌을 받을 수 있어요.
(サイバーいじめも法的処罰を受けることがあります。)
韓国のいじめ・校内暴力の現状
韓国でもいじめや校内暴力は深刻な社会問題となっています。特に近年では、インターネットやSNSの普及により、サイバーいじめが急増しています。
韓国教育部の最新調査によると、中学生の約20%、高校生の約15%がいじめを経験したと報告されています。その内容は言葉による精神的暴力から身体的暴力、強要行為まで多岐にわたります。
韓国特有のいじめの形態
韓国では以下のようないじめの形態が報告されています:
- 집단 따돌림(集団による仲間外れ)
- 금품갈취(金品の強要)
- 언어폭력(言葉による暴力)
- 신체폭력(身体的暴力)
- 사이버폭력(サイバーいじめ)
韓国の校内暴力対応制度:1号から9号まで
韓国では校内暴力の対応が法的に整備されており、行為の重大さに応じて「1号」から「9号」までの9段階に分類されています。この制度により、一貫した対応と適切な処分が可能になっています。
等級 | 処分内容 | 重大度 |
---|---|---|
1号 | 被害学生に対する書面謝罪 | 軽度 |
2号 | 被害学生に対する接触・交通・付き合いの制限 | 軽度 |
3号 | 学校奉仕活動の命令 | 中度 |
4号 | 社会奉仕活動の命令 | 中度 |
5号 | 特別教育の履修命令または心理治療 | 重度 |
6号 | 出席停止 | 重度 |
7号 | 学級替え | 最重度 |
8号 | 転校命令 | 最重度 |
9号 | 退学処分(高校のみ適用) | 最重度 |
実際に懲戒処分に至るケースは1号〜3号の間が多く、全体の約68%を占めています。4号以上の処分はかなり少なく、特に5号以上の処分は重大な暴力行為があった稀なケースを示しています。
校内暴力5号とは:重大事案の指標
「校内暴力5号」とは、韓国の校内暴力対応制度において特に注目される処分段階です。5号以上の処分は卒業後も一定期間(原則2年)記録が残り、進学や就職に影響を与える可能性があるため、非常に重い処分と考えられています。
校内暴力5号処分の特徴
5号処分は「特別教育の履修命令または心理治療」を意味し、以下の特徴があります:
- 通常の学校教育だけでは改善が見込めない重大なケースに適用
- 専門家による特別教育プログラムや心理治療が義務付けられる
- 加害学生だけでなく、保護者も特別教育を受けることが義務付けられる場合がある
- 卒業後2年間は記録が残り、削除申請が可能になるまで待機する必要がある
校内暴力5号処分の具体的事例
5号処分が適用される具体的な事例には、以下のようなものがあります:
- 被害者に重大な精神的・身体的障害を与えた事件
- 凶器を使用した脅迫や暴力行為
- 複数人による計画的な暴力行為
- 性的暴力を伴う事件
- 長期間にわたる継続的ないじめ
特に深刻な事例として、「4人で同級生に性的暴行を加えた事件」や「刃物で脅迫して金品を奪った事件」などが報告されています。
韓国のいじめ・校内暴力への対策
韓国では、いじめや校内暴力の防止・対応のために様々な取り組みが行われています。
法的対応と制度
2011年に制定された「학교폭력예방 및 대책에 관한 법률(学校暴力予防及び対策に関する法律)」により、校内暴力への対応が法的に整備されました。主な内容は以下の通りです:
- 校内暴力の定義と範囲の明確化
- 学校暴力対策自治委員会の設置義務
- 被害者保護と加害者処分の体系化
- 予防教育の義務化
学校での取り組み
韓国の学校では、以下のような取り組みが行われています:
- 定期的な校内暴力実態調査の実施(年2回)
- いじめ防止教育の必修化
- CCTVの設置による監視体制の強化
- 匿名報告システムの導入
- 학교폭력 신고센터(校内暴力報告センター)の設置
被害者支援と加害者指導
被害者と加害者それぞれに対する支援・指導も充実しています:
被害者支援
- 心理カウンセリングの提供
- 転校希望時の優先的支援
- 学習支援プログラム
- 治療費支援
加害者指導
- 特別教育プログラムの履修
- 心理治療の提供
- 保護者への教育プログラム
- 社会奉仕活動
日本と韓国のいじめ対応の違い
日本と韓国ではいじめへの対応に違いがあります。韓国の特徴は以下の点です:
- 法的枠組みの明確化(9段階の処分制度)
- 処分記録の保持期間が法的に定められている
- 保護者への責任と教育義務の明確化
- 匿名通報システムの積極的活用
日本では各学校の裁量に任される部分が多いのに対し、韓国ではより統一された制度的アプローチがとられています。
韓国語で「いじめをなくそう」を表現する
最後に、いじめ防止に関する韓国語表現をいくつかご紹介します:
- 학교폭력 없는 학교를 만들어요
(校内暴力のない学校を作りましょう) - 따돌림은 범죄입니다
(いじめは犯罪です) - 친구의 작은 변화에 관심을 가져주세요
(友達の小さな変化に関心を持ってください) - 모두가 행복한 학교를 위해
(みんなが幸せな学校のために)
まとめ
韓国のいじめと校内暴力に関する基本表現から「校内暴力5号」まで詳しく解説しました。韓国では校内暴力が9段階に分類され、特に5号以上の処分は重大な事案として扱われています。
いじめや校内暴力は韓国だけでなく世界共通の問題です。韓国語を学ぶ過程で、こうした社会問題についても理解を深めることで、より豊かな言語・文化理解につながるでしょう。皆さんも韓国語学習を通じて、より良い国際理解と共感の輪を広げていきましょう。
次回のコラムもお楽しみに!
ナ先生より